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民事再生手続き中の日用品メーカー、白元は、再建のスポンサーに殺虫剤大手のアース製薬を選んだと発表した。
無理な拡大路線が行き詰まった1923年創業の老舗は、ライバル会社のもとで出直す。
保冷枕「アイスノン」など独特な商品で消費者に浸透してきた白元。
資金面の不安から解放され、ヒットを生む開発力を取り戻せるか。
「従業員の雇用やブランド維持の観点から、アース製薬がスポンサーとして適任と判断した」。
白元の間瀬和秀社長は31日夜、都内での記者会見でこう話した。
アースは8月8日に受け皿会社、白元アースを設立。
9月1日に白元の全事業を75億円で引き継ぐ予定だ。
新会社の社長はアースが送り込むが、白元の間瀬社長ら現経営陣は役員として引き続き業務にあたる見通し。
約400人いる従業員も雇用を続ける。
白元は防虫剤や除湿剤が主力だが、液体の靴下止め「ソックタッチ」や電子レンジで温める湯たんぽ「ゆたぽん」などユニークな品ぞろえで知られる。
「売上高では小粒なイメージだが、ロングセラー商品が多く老舗の安定感がある」が一般的な評価。
5月に約255億円の負債を抱えて民事再生法の適用を申請したときには、競合他社から「新製品も普通に発売していたし、正直びっくりした」との声が相次いだ。
では、なぜ白元は破綻に追い込まれたのか。
引き金となったのは無理な拡大路線をとり続けたことだ。
特に創業家出身の鎌田真氏が4代目の社長に就任した2006年ごろから「売り上げ至上主義に拍車がかかっていった」とある業界関係者は明かす。
白元は売上高を増やし続けるため、返品を前提に需要を上回る大量の製品を卸会社に売る「押し込み販売」をしていたとされる。
素材関連企業などを次々買収し銀行からの借金も膨らんだ。
14年1月、製薬会社の興和に使い捨てカイロ「ホッカイロ」の国内販売事業を売却するなどしたが、資金繰りは改善しない。
今春、金融機関に資金支援を申し入れたが、交渉はまとまらず、破綻した。
スポンサー選定ではアースのほか、同業のエステー、投資ファンドも名乗りを上げた。
実はアースは最初から有力候補だったわけではない。
7月下旬の最終入札ではファンドが100億円以上を提示したとの情報が流れ、「100億円という桁はうちには出せない」とアースは「残念会」を開いていた。
だが最終的には同じ日用品メーカーで補完関係が成り立つと白元はアースを選んだ。
アースは1892年の創業で、大塚製薬グループが1970年に資本参加した。
シェア拡大をねらったM&Aに積極的で、2012年には入浴剤大手のバスクリンを買収した。
結果的には敗れたが、フマキラー株の争奪戦でエステーと争ったこともある。
白元の子会社化では、シェア4位の防虫剤市場で存在感を増し、流通業者との価格交渉力を高める筋書きを描く。
ただ、アースがどこまで相乗効果を出せるかは不透明だ。
業界推計によると、防虫剤でシェア1位のエステーは5割を握るガリバー。
白元とアースを足しても35%程度とその背中はなお遠い。
防虫剤の市場規模は250億円程度で横ばいが続いており、今後の成長も見込みにくい。
日用品業界では付加価値の高い製品が支持される傾向が強まり、単価は上昇基調にある。白元は小売企業のプライベートブランド(PB=自主企画)商品も手がけ「安売り企業」のイメージもある。ブランド力が盤石とは言いにくいのが実情だ。
業界内ではアース・白元連合の誕生について「それほど大きな影響はない」と冷めた見方も出ている。
「白元とアースは得意分野が異なり、相当なシナジーが発揮できる」。
民事再生法の適用申請後、創業家以外から初めて社長に就任した白元の間瀬氏は訴える。
ロングセラー頼みを脱し、斬新で付加価値の高い商品を生み出せる体制を確立する――。
老舗復活の条件だ。